さいとう内科小児科クリニック

神奈川県藤沢市辻堂元町4丁目7-21

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生活習慣病

生活習慣病とは

高血圧症

「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する症候群」と定義されます。これらの生活習慣により、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満症などの動脈硬化を進行させる病気を発症させてしまいます。これらは「死の四重奏」とも言われ、自覚症状がほとんどないまま動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中に代表される命に関わる病気や、その後の生活に重篤な障害をもたらす病気を引き起こす危険性を高めてしまいます。逆にこれらの生活習慣病をコントロールすることで動脈硬化の進行を防ぎ、心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクを下げることもできるのです。

現在、日本の死亡原因の第1位は悪性新生物(癌)、第2位は心疾患、第3位は肺炎、第4位は脳血管疾患です。心筋梗塞や狭心症などを含む「心疾患」、脳梗塞を含む「脳血管疾患」、大動脈解離などの大動脈疾患を合わせると、 日本人の約3人に1人が亡くなる原因となっております。これは、癌で亡くなる人の割合にほぼ匹敵します。

高血圧、糖尿病、脂質異常症などが疑われたら、早い時期から生活習慣の改善や疾患のコントロールを行っ ていくことが大切です。検査を行うことにより、動脈硬化の進行度や合併症の有無を判断し、進行を予防する ことが重要です。

高血圧症

高血圧症は、何らかの原因で血圧が基準値より高くなった状態をいいます。ほとんどの場合自覚症状はありませんが、頭痛や肩こり、めまいなどを自覚する場合もあります。高血圧が続くと全身の動脈硬化が進み、脳梗塞、脳出血、狭心症、心筋梗塞、大動脈解離、腎不全を発症するリスクが高くなってきます。症状がなく動脈硬化が進んでいくことから「サイレントキラー」とも言われています。

脳卒中

収縮期血圧が10mmHg上昇すると、男性で約20%、女性で約15%の脳卒中リスクが高くなります。発症を契機に麻痺や言語障害などの後遺症が残ることが多く、長期のリハビリや介護などが必要となる場合があります。

心疾患

収縮期血圧が10mmHg上昇すると、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患の発症リスクが15%上昇します。

慢性腎臓病

高血圧は腎血管に過負荷を与え、腎機能を低下させます。腎機能低下によりナトリウムなどの排泄低下を来し更に血圧を上昇させるという悪循環を招き、心臓・血管疾患のリスクを上昇させます。

高血圧の原因

高血圧の9割は本態性高血圧という、原因の明らかではない高血圧症です。高血圧の家族歴、食塩の過剰摂取、肥満、アルコールの多飲、ストレスなどの環境因子が増悪因子となることが知られています。これに対して1割程度は二次性高血圧といい、ホルモンの異常などが原因で起こります。

高血圧の診断

A. 成人における血圧値の分類(mmHg)

分類 診察室血圧 家庭内血圧
収縮期血圧
(最高血圧)
拡張期血圧
(最低血圧)
収縮期血圧
(最高血圧)
拡張期血圧
(最低血圧)
正常血圧 <120 かつ <80 <115 かつ <75
正常高値血圧 120-129 かつ <80 115-124 かつ <75
高値血圧 130-139 かつ/または 80-89 125-134 かつ/または 75-84
I度高血圧 140-159 かつ/または 90-99 135-144 かつ/または 85-89
II度高血圧 160-179 かつ/または 100-109 145-159 かつ/または 90-99
III度高血圧 ≧180 かつ/または ≧110 ≧160 かつ/または ≧100
(孤立性)収縮期高血圧 ≧140 かつ <90 ≧135 かつ <85

日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」より

高血圧の治療

降圧目標
 診察室血圧家庭血圧
若年、中年、前期高齢者(65歳-74歳)130/80mmHg未満125/75mmHg未満
後期高齢者(75歳以上)140/90mmHg未満
忍容性があれば130/80mmHg未満
135/85mmHg未満
忍容性があれば130/80mmHg未満
糖尿病130/80mmHg未満125/75mmHg未満
慢性腎臓病(蛋白尿≧0.15g/gCr)130/80mmHg未満125/75mmHg未満
脳血管疾患、慢性腎臓病(蛋白尿陰性)140/90mmHg未満135/85mmHg未満

日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」より

高血圧の方は、血圧をあげる生活習慣があると思われます。高血圧と診断されたら、減塩や減量などの生活習慣の改善を基本に、リスクの程度により薬物療法を行います。

食事

減塩(塩分1日6g未満)が基本になります。肥満がある場合は減量も有効です。EPAやDHAなどの多価不飽和脂肪酸を多く含む青魚などは動脈硬化の発症や進展を抑制することが知られています。

塩分について
スーパーやコンビニエンスストアで売られている加工食品には、栄養成分が表示されています。しかし、栄養成分表示には、食塩の成分であるナトリウムの量しか表示が義務づけられていません。そのため食塩相当量を知るためには、次の計算式でナトリウム量から換算する必要があります。

ナトリウム g(グラム)×2.5 = 食塩相当量 (g)

運動

有酸素運動が有効です。散歩などのウォーキングが基本で30分以上継続して運動することが有効です。他にも、足腰に負担の掛からない水中ウォーキングもお勧めです。具体的には、1週間に23METs・時以上の運動が推奨されています(厚生労働省健康づくりのための運動指針2013)。

運動

METs・時とは、運動強度の指数であるMETsに運動時間(hr)を乗じたものです。METs(メッツmetabolic equivalents)とは、活動・運動を行った時に安静状態(=1METs)の何倍の代謝(カロリー消費)をしているかの指標です。

禁煙

喫煙は動脈硬化の原因となります。心筋梗塞発症リスクは非喫煙者と比較して、男性で3.6倍、女性で2.9倍上昇し、脳卒中リスクは1日21本以上の喫煙者は男性で2.2倍、女性で3.9倍のリスクがあるいうデータがあります。どうしても禁煙できない場合は禁煙治療も検討してみて下さい。

禁煙
ストレス

過度のストレスは交感神経が強く働いて血圧を上昇させます。一時的な血圧上昇は健康に大きな問題はありませんが、ストレスによる血圧上昇が持続した場合は動脈硬化や心血管病のリスクになります。ストレスには過労や精神的なストレスだけでなく、痛みや睡眠不足のような身体的なストレスもあります。ストレスによる高血圧を解消するにはこれらの原因を取り除くことはもちろん、規則正しい生活を行うことも重要です。また適度なストレスとは上手に付き合うことも必要です。

SAS

SAS(Sleep Apenea Syndrome:睡眠時無呼吸症候群)などの睡眠障害も高血圧の原因となりますので、疑われる場合は睡眠時無呼吸症候群の検査を行い、診断された場合はCPAP治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法)も有効です。

二次性高血圧とは

二次性高血圧はある特定の原因による高血圧で、高血圧の約1割が二次性高血圧と考えられています。

〔主な二次性高血圧を示す原因疾患〕

腎血管性高血圧、腎実質性高血圧、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、甲状腺機能異常、大動脈縮窄症、睡眠時無呼吸症候群
脳幹部血管圧迫、薬剤誘発性高血圧、など

急な発症、重症高血圧、若年発症、治療抵抗性の高血圧は二次性高血圧が原因となっていることがあります。二次性高血圧が疑われる場合には、血液尿検査(安静時ホルモン検査等)、超音波、CTなどの画像検査などを行い原因精査します。

家庭血圧測定のおすすめ

診察室で測定する血圧は緊張などにより正しい結果が出ないことがあり、自宅で測定する家庭血圧による治療が勧められています。高血圧と診断された場合や、生活習慣が気になる場合は血圧計(上腕式)による血圧測定を行いましょう。

家庭血圧測定機

動脈硬化の合併症・検査

生活習慣病と診断されたら、必要に応じて、血管内皮機能検査(FMD)、頚動脈エコー、PWV(脈波伝播速度)などの動脈硬化検査を行います。

糖尿病

膵臓から分泌されるインスリン作用不足により高血糖状態を主徴とする症候群です。網膜や腎臓の細小血管症、全身の動脈硬化症を進展させ、網膜症、慢性腎臓病、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの生命に関わる疾患の発症リスクを高めてしまいます。また神経障害(しびれ、便秘、など)や白内障などの合併症により生活の質が著しく低下します。中等度以上の高血糖が持続することにより、口渇、多飲、多尿、体重減少、易疲労感を来しますが、それ以外では自覚症状に乏しいことにより、放置すると合併症を進行させてしまいます。糖尿病の早期発見と発症後のコントロールを行うことにより、これらの合併症を予防し、合併症が進行を抑制することができます。

糖尿病合併症
微小血管障害大血管障害その他
  • 糖尿病網膜症
  • 糖尿病腎症
  • 糖尿病神経障害
  • 脳梗塞
  • 狭心症、心筋梗塞
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 糖尿病性足病変
  • 歯周病
  • 認知症

糖尿病の診断

健診、あるいは症状などから糖尿病が疑われる場合、まず「糖尿病型」「境界型」「正常型」の判定を行います。また、「糖尿病型」「境界型」と診断された場合には、適切な運動療法と、食事療法が基本となります。当院では院内迅速検査でHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)、血糖値、尿検査を行うことが可能で、当日に結果をご説明いたします。また、必要時には空腹時に糖負荷検査(75gブドウ糖負荷試験)を行い診断します。

判定基準値判定
  1. 朝の空腹時血糖値 126mg/dl以上
  2. 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値 200mg/dl以上
  3. 時間関係なく測定した血糖値200mg/dl以上
  4. HbA1c(NGSP) 6.5%以上

(1)〜(4)のいずれかが確認された
→ 「糖尿病型」

(1)〜(3)のいずれかと(4)が確認された
→「糖尿病」

  1. 朝の空腹時の血糖値110mg/dl未満
  2. 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値 140mg/dl未満

(5)および(6)が確認された
→ 「正常型」

糖尿病の治療

 血糖コントロール目標
目標血糖正常化を目指す際の目標合併症予防のための目標治療強化が困難な際の目標
HbA1c(%)6.0未満7.0未満8.0未満

合併症の評価を行った上で、それぞれの方に必要なアドバイスをさせて頂きます。食事療法、運動療法は糖尿病の基本となる治療法です。運動療法、食事療法を行った上でHbA1c値、血糖値やその他の代謝指標を観察し、運動療法、食事療法の強化や、薬物療法を検討します。薬物療法には内服治療とインスリン治療がありますが、それぞれについて十分相談した上で、治療を進めさせて頂きます。

食事療法と運動療法

性、年齢、肥満度、身体活動量、血糖値、合併症の有無などを考慮し、エネルギー摂取量を決定します。できれば毎日、少なくとも週3〜5回、強度が中等度の有酸素運動を20〜60分間行い、計150分以上運動を行いましょう。

食事療法と運動療法

脂質異常症

(1)悪玉コレステロール値が高い (2)中性脂肪値が高い (3)善玉コレステロール値が低い―ことをまとめて「脂質異常症」と呼びます。脂質異常症は、それだけでは特に症状はありませんが、静かに動脈硬化が進行し、心 筋梗塞、脳梗塞などの血管病を引き起こします。

脂質異常症とは

血液中には脂質として、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類があります。これらの脂質は体内で細胞膜を構成する物質であり、代謝、ホルモン、エネルギーなどに関与し重要な役割を果たしていますが、多すぎると問題になってくる場合があります。脂質異常症というのは、これらの脂質の中でも特に悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が増加、あるいは善玉(HDL)コレステロールが低下した状態を示す病気のことです。LDLコレステロールは、血液中でコレステロールを肝臓から末梢組織に運びますが、多すぎると血管壁に入りこみ、動脈硬化を引き起こす一番の要因となるため、悪玉コレステロールと呼んでいます。HDLコレステロールは、血管壁の余ったコレステロールを肝臓へ戻し、動脈硬化に抑制的に働くため、善玉コレステロールと呼ばれています。中性脂肪は、多くなりすぎると肥満や脂肪肝をきたし、動脈硬化を引き起こす原因となります。

脂質異常症は、大きく分けて
LDL(悪玉)コレステロールが多いタイプ:高LDLコレステロール血症
HDL(善玉)コレステロールが低いタイプ:低HDLコレステロール血症
中性脂肪(トリグリセライド: TG)が多いタイプ:高トリグリセライド血症(TG血症)
の三つがあります。

LDLコレステロール(LDL-C)140mg/dL以上 : 高LDLコレステロール血症
120-139mg/dL: 境界型LDLコレステロール血症
HDLコレステロール(HDL-C)40mg/dL未満 : 低HDLコレステロール血症
トリグリセライド(TG)150mg/dL以上 : 高トリグリセライド血症

コレステロールは1日のうち、ほとんど変化しませんが、中性脂肪は食後3〜6時間かけて上昇します。ですから、食事療法や薬物療法の効果をみる場合は、午前中に朝食抜きでの採血が好ましく、それができない場合は採血時間を一定にする必要があります。大部分の高LDLコレステロール血症や、高TG血症、低HDLコレステロール血症は、体質、食習慣、運動不足、体重増加など生活習慣が主な原因で、成人以降に発症します。これらの脂質異常症は、他の病気に伴って起こるもの(続発性)と、他の病気を伴わずに起こるもの(原発性)とがあります。続発性脂質異常症には、ホルモンの分泌異常によるもの(甲状腺機能低下症、副腎皮質ホルモンの分泌異常など)や、糖尿病、腎臓病、肝臓病、さらに副腎皮質ステロイド治療、経口避妊薬によるものなどがあります。この場合、原因の病気の治療が大切なので、原因を見極めることが必要です。他の病気によらない原発性脂質異常症の中には、遺伝による高コレステロール血症の場合もよくあります(家族性高コレステロール血症)。家族に脂質異常症や動脈硬化性疾患が多い方は、遺伝性かどうかの診断がとても大切です。

動脈硬化を進める最大の危険因子

血液中にコレステロールなどの脂質が多い状態が続くと、血管の壁に余分な脂が沈着し、「プラーク」(粥腫(じゅくしゅ))と呼ばれる塊が作られます。こうした余分な脂は比較的短期間で血管壁にたまるため、柔らかくて壊れやすいのですが、時間の経過とともに血管の壁がどんどん分厚くなって、血管が詰まりやすい状態になります。このような、血管の壁の変化を"粥状(じゅくじょう)動脈硬化"と呼んでいます。不安定なプラークが破れると、破れた部分を修復するため、血液の成分の一つである血小板が集まり血栓ができます。この血栓が大きくなって動脈を塞いでしまうと、血液はその先に流れなくなり、血流の途絶えた組織や臓器は壊死します。脳動脈が詰まれば脳梗塞、心臓の冠動脈が詰まれば心筋梗塞、足の動脈が詰まれば急性動脈閉塞症を発症します。脳梗塞や心筋梗塞は、日本人の死因の上位を占めています。このように、脂質異常症を放置すると、症状がないまま動脈硬化が進行し、生命の危険にさらされたり、後遺障害が起こったりするのです。
動脈硬化を進行させる因子は、脂質異常症以外に高血圧、糖尿病、喫煙、家族の既往歴などがあります。しかし、近年、脂質異常症は動脈硬化の危険因子の中でも最大の要因であると言われています。

健康診断について
会社の健康診断や、市町村の健康診断では、LDLコレステロール、中性脂肪、HDLコレステロールの検査項目が含まれています。少なくとも1年に1回は健康診断でチェックすることをお勧めします。

食事療法と運動療法

脂質異常症を改善するためには、糖尿病や高血圧症、肥満症などにおける食事療法と共通して適正なエネルギーの摂取量とバランスが重要です。

摂取エネルギーの正常化と減量

肥満がある場合は、1〜3%の体重減少により、中性脂肪、LDLコレステロールの低下、HDLコレステロールの上昇が認められます。脂質異常症をはじめとする生活習慣病の病態には、内臓脂肪蓄積によるインスリン抵抗性が深く関与していますので、内臓脂肪の減量が重要になり、そのためには総エネルギー摂取量を適正化することが最も重要と言われています。必要なエネルギー摂取量の目安は下記の計算方法で算出されます。

エネルギーバランス
  • 炭水化物:50〜60%
    肥満症の方で脂質異常を伴う場合は炭水化物摂取量が過多となっていることが多く、米、パン、麺類などの主食を減らすことが減量に有効です。
  • 蛋白質:13〜20%
    蛋白質は、牛肉や豚肉より、魚、大豆たんぱく質を多く食べるよう意識します。
  • 脂質:20〜25%
    脂質は、動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸を減らすことがLDLコレステロール改善に有効かつ心筋梗塞などの心血管疾患の発症抑制効果が報告されています。
脂質摂取の制限と脂質酸の選択

魚には良質な脂質であるオメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペタエン酸)を含んでいます。これらは中性脂肪を減らし、インスリン抵抗性の改善(血糖値の改善)、血栓の形成を抑えます。血管内皮機能の改善も期待できるため脳梗塞や心筋梗塞の発症を予防します。あじ、いわし、さば、さんまなどの青魚やかつお、まぐろなどの赤身魚、魚のかまの部分に多く含まれます。 オリーブ油やナッツなどに含まれる一価不飽和脂肪酸はLDLコレステロールや中性脂肪を低下させます。マーガリンなどの含まれるトランス脂肪酸はLDLコレステロールを上昇、善玉のHDLコレステロール低下させるため、冠動脈疾患のリスクとなります。

コレステロール摂取制限

高コレステロール血症と診断された場合は、一日のコレステロール摂取量を200mg未満に制限すると脂質低下効果が期待される報告があります。しかし、コレステロール制限に関しては腸管からのコレステロール摂取率や肝臓でのコレステロール合成の程度に個人差が大きく異論があります。

アルコール摂取

適量のアルコール摂取は冠動脈疾患の発症予防効果があります。しかし、アルコールは肝臓での中性脂肪合成を高めるため、1日25g以下(ビール500ml、日本酒1合程度)が適量とされています。

日本食の推奨

食生活が欧米化する1970年代以前の日本は、植物性食品(雑穀類や大麦と精白度の低い米類・芋類・果実類・野菜類・海藻類)と海産物(魚介類・貝類)が現在より多く摂取されていました。このような食生活は総エネルギーや、飽和脂肪酸摂取を抑え、食物繊維や高不飽和脂肪酸、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取できる食事とされています。但し塩分が多くなりやすいため、血圧上昇を抑えるためにも1日塩分摂取量は6g以下を心がける必要があります。

脂質改善に向けた身体活動増加

運動は、脂質改善効果のみならず、インスリン抵抗性や血圧の改善、加齢に伴う生活機能低下のリスクを下げます。1週間に23METs・時以上の運動が推奨されています(厚生労働省健康づくりのための運動指針2013)。成人では、3METsが普通歩行の運動強度になりますので、1日60分歩くと3METs、1週間続けると21METsになります。つまり、毎日60分程度の歩行+αの有酸素運動が推奨されています。また筋力トレーニングなどのレジスタンス運動を加えることで基礎代謝が改善し、運動効果を高めることができます。運動によりHDLコレステロールの上昇と、中性脂肪の低下が期待できます。

高尿酸血症

高尿酸血症

血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると、高尿酸血症と診断されます。高尿酸血症の状態が長く続くと、血液に溶けきらなかった尿酸は結晶になって関節に沈着し、急性関節炎(痛風)を引き起こします。また、血清尿酸値7.0mg/dLを超えると、高くなるに従って痛風関節炎の発症リスクが高まると報告されています。
血清尿酸値の高い方は、メタボリックシンドローム(肥満、脂質異常症、耐糖能異常、高血圧症など)の頻度が高くなり、動脈硬化疾患の発症に関与しているので、注意が必要です。

高尿酸血症の治療

食事

尿酸値が高くなる原因の1つは食品に含まれるプリン体の取り過ぎです。プリン体を多く含む動物の内臓や魚の干物の食べ過ぎには注意が必要です。プリン体は体内でも作られ、肝臓で尿酸に変わり尿として排泄されます。肥満になると尿酸を作りやすく排泄しにくい状態になりますので、食べ過ぎをやめて適正な体重に戻すことも大切です。尿量が増えれば尿と一緒に多くの尿酸を排泄できますので,適切な水分摂取を心がけましょう。尿をアルカリ性に近づける海藻や野菜は尿路結石の予防に有効です。

食事

運動

激しい運動(無酸素運動)は代謝が活性化し尿酸値が急上昇するため、ウオーキングなどの軽い運動(有酸素運動)を定期的に行うことが推奨されます。ストレスは尿酸値を上げます。その解消にも運動は有効です。

飲酒

アルコール自体に尿酸値を上げる働きがありますので、ウイスキーや焼酎などの蒸留酒などのプリン体を含まない飲酒も尿酸値を上昇させます。日本酒1合(180ml)、ビールロング缶(500ml)程度の飲酒量にしましょう。

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